誇り高き

「人の気配があると、眠れないからな」

昔から紅河は人の気配に酷く敏感で。

何か気配がある限り、決して眠らなかった

例え眠ったとしても、意識は常に起きている浅い眠り。

先程も立ったときに、手がぴくりと反応していた。

_____こいつが安心して寝ていたのは、両親と寝ていた時だけだったな。

彼女の味方は、家族と俺しかいなかったから。

常に、冷たい目で仲間____仲間と言うべき存在ではないが_____から見られていた。

親が死んで、俺も里を出て、自分以外味方がいなくなって。

紅河は、一人で必死に生きてきたのだろう

彼女は、誰よりも強い。

でなければ、彼女は今、生きていないだろう。

そして彼女は誰よりも、脆い(よわい)。




どうか、今心を取り戻してくれるな。

今、心を取り戻したら。

今度こそ、彼女の心は…………


砕けてしまう。



彼女が彼女でなくなってしまう。



どうか、光が消えないように………




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