誇り高き
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「行ったか………」

山崎の気配が完全に消えると、紅河はゆっくり起き上がった。

最初から彼女は寝ていなかったのだ。

念のため慎重に気配を探る。

誰もいないことを確認して、布団から抜け出すと手早く着替えた。

「………土方。まだ気持ち悪いぞ」

これで何かへまをしたら、ただじゃおかない。

一、二本の苦無と短刀を懐に忍ばせて部屋を出る。

ひたりひたりと廊下を歩き、一つの部屋の前で止まった。

「荒木田さん。紅河です」

囁くように言うと、扉が僅かに開いた。

その隙間に髪を差し込む。

がさがさと紙を確認する音が響いたあと、扉ががらりと開いた。

「入ってくれ」

するりと部屋に入ると、すぐに扉が閉まる

「楠さんは?」

その声に前後して、

「楠です」

と、扉の外で声がした。

先程と同じようにして、楠が入ってきた。

「誰にもつけられていないな」

荒木田が抑えた声で言う。

「大丈夫です」

「私も、確認しました」

二人が頷いたのを見て、荒木田の目がキラリと光った。

「いいか、作戦は明日決行する。俺と紅河で幹部を狙う。楠、お前はその間に情報を持って逃げろ」

「荒木田さんと紅河隊士長はどうするのですか」

「俺と紅河は上手く逃げるさ。お前は自分の仕事の事だけ考えればいい」

「そうですね。心配は無用です」

二人に力強く頷かれて、では………と楠もひきさがった。


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