トキトメ
 ピンポーン。

「誰だろう・・・」

 インターフォンの受話器を取る。

 相手は、崎田さんだった。

 ドアを開けると、そこにはバスタオルに身をくるんだだけの彼女が立っていた。

「さ、崎田さん。そんな格好で出て来ないでよ」

「ごめんなさい。出たんです!」

「出たって、何が?」

「黒いのが」

「黒いの? 幽霊?」

「ち、違います。黒くて、テカッと光って」

 そこまで言っただけで、彼女は顔をしかめて身震いした。

「もしかして、ゴキブリ?」

「あー、そのものズバリを言わないで下さい!」
 
 彼女は足をバタつかせて嫌がっていた。

「嫌いなの?」

「嫌いなんてもんじゃありません。この世の中で一番怖い」

 ふふっ。

 本当に嫌いなんだ。

「待って、俺が退治してやるよ」

 そう言うと俺は、彼女の部屋に上がった。

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