トキトメ
「待てよ。誤解だって」

「・・・」

 駐車場に戻った彼女。

 そこには車が止まっていて、運転席にはトキトメで止まったままの塚田さんの姿があった。

「良ちゃん、時間を動かして」

「どうする気だよ」

「今日は、友達の家に泊まる」

「俺、何も悪い事してないよ」

「いいから、時間を動かして」

「どうして信じてくれないんだ?」

「いいから早く!」

 俺は指を鳴らした。

「あれっ? 椛島さん・・・。前田君も、いつの間に?」

 塚田さんが不思議そうな顔をしている。

「塚田さん、すみませんが、駅まで送ってもらえますか?」

「えっ?」

 彼女は返事も待たずに車に乗り込んだ。

「どこに行かれるおつもりですか?」

「いいから、出して下さい」

 彼女は、塚田さんの横でうつむいていた。

 彼は外に立っている俺の方に目を向ける。

「前田君、いいの?」

「・・・勝手にしろよ」

 そう言い、俺はマンションに戻った。

 5階に着き、駐車場を見下ろすと、塚田さんと彼女を乗せた車が去って行くのが見えた。

「くそっ!」
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