トキトメ

 ~良太郎side~


「課長、おはようございます」

 振り向くと、塚田さんがドアのところに立っていた。

 律ちゃんはまだ出社していない。

 携帯も通じず、どこにいるのかもわからない。

 夕べ、あんな風に突き放した俺が馬鹿だった。

 心配で一睡も出来ず、会社に来たらきっと彼女が来ているはず。

 そこで昨日の事を謝ろうと思っていた。

 なのに、彼女はまだ来ない。



「おお、塚田君じゃないか。夕べはすまなかったね。遅くに家まで送ってもらって。あれから、椛島も送り届けてくれたんだろ?」

「椛島さんの事なんですが」

「椛島? そういえばあいつ今日は来るのが遅いな・・・」

「実は彼女、夕べ貧血で倒れまして」

 ガタン! 
 
 反射的に立ち上がった。

 その音に、塚田さんの目がこちらに向けられた。

 他の社員達も心配そうに塚田の次の言葉を待っていた。

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