トキトメ
「それで、椛島は?」

「しばらく入院が必要だそうです」

「そんなに悪いのか・・・」

「治療すれば大丈夫ですから心配しないで下さい」

「そう言えばあいつ、最近ちょっと顔色が悪かった気がするな。同じ部署にいながら気づいてやれなくて悪かったな」

「大丈夫ですよ。すぐ退院出来ると思いますから」

「いや、塚田君、ありがとう」

「いえ。それでは僕は部署に戻ります」
 
 そう言うと彼は出て行った。

 俺はその後を追いかけた。

「待って下さい! 彼女、本当に大丈夫なんですか?」

 廊下に出たところで彼を呼び止めた。

「ああ、心配しないでいいよ」

「どうしてすぐに、連絡くれなかったんですか? どこの病院ですか? 俺、すぐに行って来ます」

「彼女、まだ君には会いたくないそうだ」

「・・・夕べの事、まだ怒っているのか。俺、本当に何もしてないのに、どうして信じてくれないんだ」

「前田君、前に言ったよね。彼女を悲しませるような事をしたら、その時は彼女を奪うって」

「塚田さん・・・」

「でも、今回は君を信じるよ」

「えっ?」

「君に浮気なんか出来るわけがない。彼女を思う気持ちが半端じゃないのはわかっているから。でも、もうしばらく待ってやって欲しい。彼女の気持ちが落ち着くまで」

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