トキトメ
 それから、また忙しい日々が始まった。
 
 妊娠の事を知っている仲間は、みんな私の身体を気遣ってくれた。

 知らぬは課長ただ1人。

 彼は相変わらず、私をこき使う。

 そんな時は、大賀さんや前園さんが、さっと助け舟を出してくれる。

 そうそう。

 営業2課の古賀くんとは、私が書類を届けてくれるように頼んだ一件以来、急速に関係が進んで、今はラブラブらしい。

 昼休みも、お弁当持って彼の所に行っちゃうもんだから、前園さんとしては寂しい思いをしているようだ。

 今度は前園さんにも誰か紹介しなくっちゃね。



「課長、もう1人社員を入れて下さい。椛島リーダーが戻って来たからと言っても、崎田さんの分の人員が不足です」

 前園さんが懇願する。

「そうだな・・・」

「課長、面接に来ていた林田さんはどうですか?」

 私がそう提案すると、課長は目を輝かせた。

「おお、そうだな、彼女の履歴書取ってあったかな・・・」

 課長は、机の引き出しを探った。

「あったあった。よし、電話してみよう。だけどもう、別の所に就職したんじゃないかな・・・」

 彼は受話器を持ち上げると、電話を掛けた。

 そんな姿に、前園が顔を近づけて来る。

「リーダー、課長何であんなに嬉しそうな顔してるんですか?」

「林田さんって人、めちゃめちゃ課長好みだったのよ」

「あ~だからか・・・」

 前園は納得したというように大きく頷いた。

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