トキトメ
「えっ?」

「奴はそれから、俺を利用して時間を止めさせ、その間に好きな子にキスしてみた
り、店で万引きしたりした。それで奴とは縁を切り、この能力を封印してきたんだ」

「でも、昨日・・・」

「久しぶりに使ったよ。律子さんと、キスしたかったから」

 彼はそういうと照れたように笑った。

「トキトメ」

「えっ?」

「良くんの特殊能力のネーミング。トキトメって良くない?」

「トキトメ・・・うん、いいね」

「安心して。私は絶対悪用なんかしないから」

「律子さんのお願いだったら、何でも聞いちゃうかも」

「良くんったら」

「あー、何か腹減ったね」

「そうね。何か作るわ」

「材料あったかな・・・」

 彼が冷蔵庫を覗き込む。

 私も後ろから覗き、OKサインを出した。


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