トキトメ
「ううん。その逆よ。これで堂々とお弁当が作れるわ」

「えっ?」

「毎日車に乗せてもらうお礼にって事にしてね」

「あ~なるほど」

「よし、それじゃ行こっ」

「うん」

「いい? 社内じゃ絶対普通に接してね」

「了解」

 事務所の扉を開けると、女子社員の目が私と良くんに向けられた。

「大賀ーあんたまた余計な事言ったでしょー」

「いいえ。ただリーダーにお抱え運転手が出来たって事だけです」

「それが余計なのよ」

「あーあ。私も前田くんっちの近くに住んでたら良かった。そしたら私の運転手になってくれてたかもしれないのに」

「ホント、リーダー羨ましいです」

「何? あんた達、良、いや前田くんの事が好きなの?」

「だって、カッコいいじゃないですか~」

 2人は、胸の前で手を組んで、目をパチパチさせながら祈るように彼を見ていた。

 まるで、アイドルでも見るような目つきだ。
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