トキトメ
「それじゃ、前田くんも上着持って来てちょうだい」

「わかりました」

 準備が済むと、私と良くんはエレベーターに乗り込んだ。

「良くん、塚田さんにバレないようにね」

「律ちゃん、俺何をすればいいの?」

「良くん、社内では、ちゃんとリーダーって呼んでよ」

「そういう律ちゃんこそ、俺の事名前で呼んでるけど?」

「あっ・・・。まっ、いいか。誰もいないところでは。でも私、大賀達の前で危うく良くんって言いかけたわよ」

「いいんじゃない? バレたらバレた時で」

「ダメよ。気まずくなっちゃうでしょ。それに、良くんファンも多いみたいだし」

「それって、焼いてる?」

「別にそんなんじゃないけどっ」

「ふふっ、律ちゃんってかわいい」

「もお、いい大人をからかわないで。さあ、ここからは上司と部下だからね」

「わかりました」

 玄関前に、営業車が停車していた。

「お待たせしました」
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