トキトメ
「ほら、社に戻って、あなたが彼の頭を撫でてたでしょ。実は後ろから見てたんですよ。それに、車の中でも、時々目を合わせて微笑んでましたよね」

「塚田さん、お願いです。他の人には内緒にして下さい」

 私はぎゅっと目を瞑って、顔の前で手を合わせた。

「もちろん言ったりしません。お互い気まずくなるだろうし、どちらかが辞めさせられる羽目にでもなったら、僕は責任を取れませんからね。でも、こんな事なら、もっと早くあなたに告白しておくべきでした」

「えっ?」

「前田君、彼女を泣かせるような事をしたら、その時は遠慮せずに奪うからね」

「彼女を悲しませるような事は、絶対にしません」

「だったらOK。これからは2人の事を応援するよ。もちろん、こっそりとね」

「塚田さん・・・」

「それじゃ、お疲れ様」

 彼は後ろ向きのまま軽く手を振って去って行った。
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