トキトメ
「律ちゃん、帰ろう」

 良くんのあたたかくて大きな手が私の手を包み込む。 

「良くん、怒ってない?」

 ちょっぴりドキドキしながら、横にいる彼を見上げた。

「何が?」

「男の人と帰ったりして」

「全然。塚田さん、いい人だね。それより今日、ビーフシチュー作ったんだ」

「ホント? 私大好き!」

「良かった。それじゃ早く帰ろう」

「うん」

 良かった。

 良くんがあの人みたいじゃなくて。


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