トキトメ
 家に戻り、締め切った窓を開けると、気持ちの良い風が頬を撫でた。

 ベランダに干していた洗濯物を部屋に入れ、窓の内側のカーテンレールに掛けた。

 俺がたたんでもいいんだけど、律ちゃんは俺が何でもしてしまうのを嫌う。

 俺の為にいろんな事をしてあげたい。

 その気持ちに溢れているんだけど、残業が多くてままならない。

 気持ちに反して、したい事が出来ない自分を責めるような時もあるから、急がない仕事はなるべく手を付けずに残しておく事にしていた。

 以前彼女にも言ったけど、俺は20代になってから恋愛はしていない。

 その前の彼女はかわいい子だった。

 甘えん坊で、気に入らない事があるとすぐに機嫌を悪くした。

 当時は彼女の事が大好きだったから、どんなわがままでも仕方が無いなと許せた。

 最後は、好きな男が出来たからと、あっさり俺の前からいなくなってしまったけど、彼女との恋はいい思い出になっている。

 
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