トキトメ
 社内での崎田さんは、朝の様子が嘘だったかのように笑顔で明るく働いていた。

 電話の応対も良く、どの社員とも仲良くやっている。

 やっぱり朝は機嫌が悪かっただけなんだわ。
 
「崎田さん、ちょっとこれ、経理部まで届けてくれるかしら?」

 大賀が、封筒を上げた。

「どなたに渡せばいいんですか?」

「誰でもいいわ。請求書って言えば受け取ってくれるから」

「わかりました」

「あっ、崎田ちゃん、ついでに倉庫からストックフォームの罫線入りを一箱取ってきて来てくれない?」

 富田、女の子にストックフォームは重いでしょ。

 と、心の中で思っていると、

「富田さん、ストックフォームは重たいから俺が持って来ます」

 と、良くんが助け舟を出す。

 やっぱり良くんは誰にでも優しい。

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