トキトメ
「前田、お前優しいな。だからモテるんだろうな」

「そんな事ないですよ」

「なあ崎田さん、キミ、前田みたいな奴、好きだろ?」

「えっ! ええ、まあ前田さんに限らず、優しい人は好きですよ」

「そっかー、やっぱり俺ももっと優しくなんないといけないな。じゃっ、前田頼むよ」

「そこはしっかり頼むんですね」

「うん? 何か言った?」

「いえ、何も」

 そう言うと、彼はドアを開けて出て行った。

 封筒を手にした崎田さんが、その後を追う。



「椛島、この書類に目を通しておいてくれ」

 課長が何やら書類の束を差し出して来た。

「いつまでに見ればいいですか?」

「明後日には欲しい」

「わかりました」

 ひとまず書類を机の端に置く。

 期限が明後日なら、今すぐ目を通す必要はない。

 机の上には他にも書類の山脈が連なっている。

 高低差はあるものの、平らになる事は滅多にない。

 その中から、期限の近いものから順番に処理していくのが私のやり方。

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