トキトメ
「あっ、忘れてた。ごめん、ちょっとスーパーに寄ってもいい?」

「えっ?」

「砂糖が切れてた」

「じゃあ、ついでに私も買い物してもいいですか?」

「もちろん。今日だったら重たい物も持ってあげるよ」

「じゃあ、いろいろ買いだめしちゃおうかな」

 俺達は、方向を変えるとスーパーに向かった。

 店は、買い物客で賑わっていた。

 夕方のタイムセールに、主婦達が群がっている。

 目的の砂糖を手にした俺は、カートを引いて買い物をしている崎田さんの横に並んで店内を歩いた。

「崎田さん、いつから独り暮らししてるの?」

「高校卒業して、就職してからずっとです」

「そうなんだ。だったら、料理なんかも上手なんだろうね」

「独りだと、手抜きになる事が多くて。たくさん作っても余っちゃうし、お鍋とかは出来ませんね」

「そう? 俺、作ってたよ。1人分の小さな土鍋買ってさ」

「お鍋って、たくさんの人と食べるからおいしいんじゃありませんか? 独りで食べてると、なんだか虚しくなりません?」

「そっかなー。気にした事なかったけど」

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