彼の言葉は。
幻聴?


…成長したと思ってたのに、あんまり成長してないかも。



だって…彼の声は聞こえるわけない。




それでも尚、彼の声は耳に入ってくる。


「シカトですか?」


やばいやばい。


もしかしたらあたし、重症かもしれない。



おかしい。


ブンブンと首を振って、ありえないと心に言い聞かせた。



「何やってんの?」

ついさっきまで、後ろにいたはずの声が急に隣からした。



驚いてバッと顔をあげれば―…



少し大人びた、見慣れた顔。



思わず口に手を当てて
「嘘…」
と言ってしまう。



「何が嘘なの?」


彼がそういったと同時にあたしの目から一筋の涙が伝ったのを感じた。




「え、何泣いてんの!?」


それをみて、慌てふためく彼。


彼が、帰って、きた…?


「本物…?」


「も、もちろん本物だけど」


「なんでいるの?」


「帰ってきたから?」

あたしは止めどなく流れてくる涙を拭おうともせず、ただ空いた隙間を埋めるように、彼に質問し続けた。



しばらくして、
「ね、今度は俺が質問していい?」
と彼が聞いてきた。


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