「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「こんな山道をしょっちゅう往復してたら、健康に良さそうだね。」

そう言ったアズロの顔には玉のような汗が流れていた。



「君は普段は飛んでることが多いの?」

「まさか…僕は鳥じゃないんだよ。
見ての通り、人間だからね。」

他愛ない会話を交わしているうちに、僕達はどんどん山道を登って行き…
しばらくして、僕は、母さんが話していた森と思しき場所をみつけた。



「アズロ、こっちだ。」

「こっち?村は森の奥にあるの?」



母さんは言った。
森を進んでいくと、洞窟があって…
その奥に人が一人擦りぬけられる程度の細い通路があるって…
たいがいの人間はそんな所の先に何かがあるとは考えない。
だけど、その先に母さんの住んでいた村があるんだって。



森の中を進んで行くと、不思議な事にその先は行き止まりになっていて、そこを念入りに探すと、母さんの言ってた洞窟の入口がみつかった。
木々で目隠しされた非常にわかりにくい場所だ。



「ずいぶんと変わった地形だね。
山崩れでもあったのかな?」

「アズロ、こっちだ。」

「こんな所に洞窟が!?
君は、ここに洞窟があるって知ってたの?」

「母さんから聞いてたからね。」



僕は、そう答えると、アズロにはかまわず洞窟の中へ足を踏み入れた。
あたりは日が暮れ始めていたから、少し進んだっただけで、すぐに足元が見えない程暗くなった。
ランプは持っていたけど、油がない。
どうしようかと考えた所、僕は偶然壁にかけられた松明をみつけた。



「ねぇ、シンファ…
こんな所で何をするつもりなんだい?」

「良いからアズロ、人が一人擦りぬけられるような隙間をみつけて。」

「隙間?じゃあ、壁伝いに歩いた方が良いんじゃない?」

ひんやりとした洞窟の中は、思ったよりも広い。
どこか遠くで、水の滴るような音が時折聞こえるだけで、その他には僕達の足音と衣擦れの音しかしない。
息遣いさえも響いて聞こえるような静寂は、二人でいても心細いものだった。
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