「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
002:哀しみなんて知らない
「ねぇ、ところで、君の名前はなんて言うの?」
「……だから、さっき言ったじゃないか。
『ゴースト』だって…」
アズロは僕のその返事に、やれやれといった具合に頭を振った。
その様子を見ながら、僕の胸はじわっと痛む。
別に、何がなんでも話したくないわけじゃない。
ただ…どこか気恥ずかしかっただけ。
このところ、誰かに名前を訊ねられたことなんてなかったから…
こんな風になってから、僕は他人との接触を避けるようになっていた。
いや…避けられてたのは僕の方か…
それに、僕のことを知ってる者がいるんじゃないかって思うと、町からずいぶん離れるまで、自ら名乗る気にはなれなかった。
僕の名前も、僕と同じように……
「実をいうと、僕もね…
けっこう偽名を使ってた時期があるんだ。
ま…いろいろと、事情があってね…」
少年のようにはにかみながら、アズロは唐突にそう言った。
「だから、偽名でも良いから教えてよ。
……『ゴースト』以外の、ね。」
彼の無邪気な笑顔に、気が付いたらいつの間にか僕は微笑んでいた。
全く、不思議な人だ…
そう考えた次の瞬間、僕の頬はさらに緩んだ。
…今更、何を考えてるんだ…
そもそも彼は空を飛ぶことが出来るとても不思議な人だったんだと思い出したから。
「……どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ。
じゃあ……シンファ…なんてどうかな?」
「シンファ…うん、良いね。
じゃ、あらためてよろしくね、シンファ…」
涙がこぼれそうになるのを、僕はぐっと堪えた。
アズロが口にしたその名前は、偽名などではない僕の本当の名前…
最近では、誰からも呼ばれていなかった僕の名前…
懐かしさと切なさに、胸が詰まる想いがした。
「……だから、さっき言ったじゃないか。
『ゴースト』だって…」
アズロは僕のその返事に、やれやれといった具合に頭を振った。
その様子を見ながら、僕の胸はじわっと痛む。
別に、何がなんでも話したくないわけじゃない。
ただ…どこか気恥ずかしかっただけ。
このところ、誰かに名前を訊ねられたことなんてなかったから…
こんな風になってから、僕は他人との接触を避けるようになっていた。
いや…避けられてたのは僕の方か…
それに、僕のことを知ってる者がいるんじゃないかって思うと、町からずいぶん離れるまで、自ら名乗る気にはなれなかった。
僕の名前も、僕と同じように……
「実をいうと、僕もね…
けっこう偽名を使ってた時期があるんだ。
ま…いろいろと、事情があってね…」
少年のようにはにかみながら、アズロは唐突にそう言った。
「だから、偽名でも良いから教えてよ。
……『ゴースト』以外の、ね。」
彼の無邪気な笑顔に、気が付いたらいつの間にか僕は微笑んでいた。
全く、不思議な人だ…
そう考えた次の瞬間、僕の頬はさらに緩んだ。
…今更、何を考えてるんだ…
そもそも彼は空を飛ぶことが出来るとても不思議な人だったんだと思い出したから。
「……どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ。
じゃあ……シンファ…なんてどうかな?」
「シンファ…うん、良いね。
じゃ、あらためてよろしくね、シンファ…」
涙がこぼれそうになるのを、僕はぐっと堪えた。
アズロが口にしたその名前は、偽名などではない僕の本当の名前…
最近では、誰からも呼ばれていなかった僕の名前…
懐かしさと切なさに、胸が詰まる想いがした。