「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「アズロ…僕は、今、あてのない旅をしてるんだけど、なんなら君も一緒に来る?
それとも、この場所を離れない方が良いのかな?」

多分、僕は彼が触れられたくない話題に触れてしまったんだと思った。
だから、話をはぐらかそうとして、咄嗟にそんなことを思いついてしまったんだ。



「……実はもうずいぶん離れちゃったんだ。
まぁ、その場所へ戻ることはそう難しくはないけど…
やっぱり、出て来た場所の近くにいた方が良いと思う?」

「わからないよ、そんなこと…
僕、違う世界に吸いこまれたことなんてないもの。」

「……それもそうだね。」

僕の精一杯の冗談に、アズロはそう言って笑ってくれた。



「よし!じゃあ、君と一緒に旅でもするか。」

「ゴーストと空を飛ぶ人間…
……なんて、素敵なコンビだろうね。」

自嘲めいた笑みが、僕の口許に宿った。
そう…僕達は見世物にしたら最高のコンビかもしれない…
さすがに、それは言わなかったけど…



「無敵のコンビだ!」

僕の皮肉はアズロにはまるで通じていなくて…
アズロは僕の肩に手を伸ばし、そして態勢を崩しそうになって慌ててバランスを取った。



「……アズロ、気をつけてよ。
僕はゴースト。
触れようとしても、僕には誰も触れられない。
誰の手も擦りぬけてしまうんだから…」

アズロは、ただ黙って僕の瞳をみつめて…



「シンファ…
旅をしながら、君のこと、いろいろ教えてくれる?
それとも、訊ねられるのはいやかい?」

「……構わないよ。
君が知りたいなら、なんでも話すよ。
つまらない話だけどね……」

意地悪な言い回し…
そんなことはなんでもないと去勢を張って…

でも、本当は話したくない辛い記憶で……
なのに、訊かれたことが不思議と嬉しくて……



それは、多分、彼がただの興味で訊ねてるんじゃないってことが感じられたから。
会ったばかりなのに、なぜ、僕はアズロのことをこんなに信頼してるんだろう…?



「ところで、シンファ…
……お腹すかない?」

真顔でそう訊ねたアズロに、僕は思わず苦笑した。
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