話術師フェイス
戦士フェイス
 梅雨が迫る5月下旬の日差しは、春の陽気を通り越して夏の湿気と暑さを舞い込んでくるほどに、激しく暑い。



 たった6畳しかないボクの部屋。



 二年間開かれたことのない窓のカーテンは、太陽の光をさえぎりながらも、ご丁寧にその湿気と熱だけを運んでくる。



 もはや暑くて、眠れたものではない。



 まったく・・・・。



 少し、日本の気候という奴に腹を立てながら、ボクは枕元においてあるメガネをかけて、時計を見てみる。



 2年間まったく切らなかった髪の毛が邪魔して視界をさえぎるが、壁掛け時計を見るぐらいなら、気にならない。



 午前11時。



 ボクにしては早く起きすぎだ。出来ることならもう少し寝ていたい。



 でも、この暑さではいつまでもベッドの中にいることの方が気分が悪い。



 仕方なしに、ボクはベッドから這い出て、軽く背伸びをする。



 ジュータンが敷き詰められた6畳しかない部屋。



 これが、今のボクの世界のすべてだ。



 南側には決して開かれることのない窓。



 東側には、窓と同じように二年間ほとんど開かれたことのない扉がある。



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