話術師フェイス
 山の手公園は、ボクの家から歩いて15分ほど歩いたところにある小さな児童公園である。



 山の手住宅街と呼ばれる住宅地のど真ん中にあり、敷地の広さは学校の体育館程度。



 そこにところせましと滑り台、ブランコ、砂場と典型的な自動道具が並んでおり、安全面と治安面に危惧してか、入り口以外は緑色の網で囲んであった。
この場所を指定したこと。



 そして、ボクの家に直接手紙を渡したこと。



 そこから考えて、当然相手はボクの名前、顔、住所までを把握しているだろう。



 ・・・・・・だから、どうした・・・・・。



 別にそれに対して焦る必要はない。



 そんなことは最初から分かっていたことだ。



 相手が、ボクの全てを知ってるというのであるならば、ボクはそれを逆手に取れば良いだけの話。



 決してハンデではない。



 むしろ、ボクにとっては、それこそが最大の武器と言えるかもしれない。



 劉備も大和すらも持ち得なかった、最強の武器。



 守るものがないからこそ隠すものがないからこそ、全力で攻撃に集中できる。



 おそらく、彼らが今まで対峙したことのなかった敵・・・。



 ・・・・それが・・・・ボク。『話術師』だ・・・。



 自分の立場を理解しろ。自分がどこに立っているのかを理解しろ。



 そうすれば、おのずと自分ができることが理解できる。



 人は、誰だって『最強』になれる。



 ボクは『最凶』になることだってできる・・・・・・・・・・ハズだ・・・・・・・。

< 95 / 207 >

この作品をシェア

pagetop