話術師フェイス
「おまたせ。」



 その凛とした女性の声は、突然ボクの耳に届いた。



 声だけが聞こえ、姿が見えなかったのは、ボクが公園のベンチを照らす街灯の真下にいて、彼女が何の光源もない公園のど真ん中にいたからに過ぎない。



 正面を見据えていると、すぐにその姿が浮んでくる。



 黒い長髪に、若干細めの一重の瞳、高い鼻に大きな口。



 左耳にだけハート型のピアスをつけている。



 色落ちしたジーンズに大き目の黒のパーカーを着ているあたりで、あまりお洒落に興味のない女性だと言うコトは判断できたが、それでも、彼女がとても細身で高い身長を有しているコトは見て取れた。



 見た目、20代前半。



 下手をしたら10代後半と言ったところだろうか・・・・。



 車が止まっている気配はない。



 そもそも、車・・・あるいはタクシーが来たならばその瞬間に気がついたはずだ。



 歩いてきたのか・・・?



 だとしたら・・・・・・・・・。



 いや・・・・。



 探るだけ野暮というものか・・・・・・・・。



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