話術師フェイス

「はじめまして･･･と言うべきかな？」



　彼女は歩きながら、ゆっくりとボクに近づくと目の前で立ち止まり、屈託のない笑みを浮かべながら、ボクに右手を差し出した。



　とりあえず、敵ではないということの証明だろうか･･･。



　弥生さんではない････。



「少し、おかしな話ですけど、一応こうして『会う』のは初めてなのだから、はじめましてで良いんじゃないですか？うさ美さん。」



　彼女に返すように、ボクもベンチから立ち上がり右手を差し出し握手をした。



　よく考えたら、母親以外の女性の手を握るなんて、ボクにとっては初めての経験だ。



「やっぱり、ばれていた。」



　少し舌を出しておどけるうさ美さん。



　その姿はちょっと見とれてしまうぐらい可愛らしい。



「ただの勘ですよ。」



　彼女が握手をほどいて、ボクの座っているベンチに座ったので、ボクもそれに続く。



　たぶん、はたから見ると男女が公園の街頭の下で愛を語らっているように見えるのだろうな･･･。



　やってるコトは、それとは程遠いことだけど･････。



「だけど、ノーヒントではないんでしょ？」



　なんで、うさ美さんまでその言葉を知っているんだ？