プリキス!!
恵がそう言うと、姫先輩は顔をガバッとあげた。
マスカラも、アイラインも涙で取れかけて真っ黒になってる。
けれどそんなのお構いなしに姫先輩は勢いよく立ち上がった。
「えれなの悪口なら言ってもいいけど、悠河君の悪口は許さない!!」
そう言った姫先輩は、自分で言ったその言葉に驚いていた。
愛を捨てて、地位や権力に生きていこうと思ってたのに、自分が悠河先輩を守ったから。
「えれな……悠河君が好き。」
ポツリと言ったその言葉。
声は小さかったけど、それは大切なものを確かめるような口調で。
「初伊ちゃん、恵君、美琴君……。本当にすみませんでした。」
姫先輩は頭を下げた。
「恵君、えれなの地位、剥奪してね。」
「初伊に怖い思いさせた時点でそうする気でした。」
姫先輩が今まで守ってきたものを、彼女はいともたやすく手放した。
その顔は、晴れやかで。
「もう姫なんていらない。だってえれなは……悠河君だけの“プリンセス”だもん。」
「姫先輩……。」
「初伊ちゃん、ごめんなさい……。本当に。それから……ありがとう。」
姫先輩は微笑んだ。
メイクは取れてるし、髪はボサボサだったけど、今まで見たなかで一番可愛い笑顔だった。