プリキス!!
「今まで、突き放して悪かった。事情があった。」
そう言って、吉良は泣きじゃくる私の背中をさする。
本当は、これからも距離を取り続けるつもりだった。
吉良はそう語った。
あの夜、私が東に襲われるのを盗聴器で聞かなかったら、私の前に現れなかった、と。
「再開してからも、もう会うのはやめようと思っていた。でも、夜白に好かれ始めるし、熱出すし、挙句の果てに東に拉致される。まったくお前は……心臓がいくつあっても足りないな。」
顔をあげて吉良を見れば、冗談っぽく笑う姿が目に入った。
その笑い方は、昔よく悪戯をして、怒られた後の表情。
元気出して、と妹を励ます兄の顔。
ああ。
何だか無性に、お兄ちゃんと呼びたくて。
「吉良、また……呼んでいい?お兄ちゃんって……呼んでもいい……?」
兄じゃない、と拒絶されたから、吉良にもう一度お兄ちゃんと呼んでいいかを聞くのは怖かった。
また拒絶されるかもって。
でも……
吉良は微笑んだ。
人形みたいに整った顔に、ふわりと笑顔を浮かべて。
それは無言の肯定。
「お兄ちゃん!迎に来てくれて、ありがとう!」
「帰ったら卵粥、温めて食べるぞ。」
私達はバラバラになった心を、もう一度繋げる事が出来たみたいだ。
16歳の春、
兄が帰ってきました。