プリキス!!
お兄ちゃん……ね。
お姉ちゃんはそう呟くと、お兄ちゃんの首ねっこをガッと掴み、お兄ちゃんを引きずって部屋の外に出た。
あの細い華奢な体の何処にそんな力があるのかと疑いたくなる。
「初伊、さっきキスした時、まだ体が熱かったわ。もう寝なさいね。」
社交界で培った有無を言わせない微笑みで私に優しく「良い夢を」とだけ言って、扉を閉めた。
お兄ちゃんは昔からお姉ちゃんに勝てない。
怒ってるお姉ちゃんになら尚更。
「ふざけるんじゃないわよ!!」とお皿を投げるお姉ちゃんと救急車が脳裏に浮かんだが最後。
私はいてもたってもいられなくなって、こっそり部屋を抜け出した。
部屋から出るとすぐに、話し声が聞こえた。
二人はきっと食卓で話してる。
「……よ。」
「〜〜〜。」
「……ば、いいじゃないの。」
「……ぃ。」
出来ることなら階段を降りずに話を聞いていたかったけれど、
声が断片的にしか聞こえなくて。
こうなったら、ゆっくり、ゆっくーり降りていって話が聞こえる所で待機しよう。
バレないようにと気を使って階段を降りる。
────が。
「きゃあっ!!」
ガタンガタンガタンッ
忍び足がいけなかったのか、完っ全に足を踏み外した。
ドタドタと大きな物音と叫び声。
これは完全にバレたね。