プリキス!!
美琴side
初伊ちゃんと西南が帰った後は、嵐が過ぎ去った後という言葉が本当に似合う状況だった。
たった四人で、東の軍勢を一網打尽にしたあいつら。
東の別棟内では、怪我人がお互いに薬を塗ったり包帯を変えたりとしているそうだ。
“そうだ”というのは聞いた話だから。
「いっつつつー……。あー、痛ー。」
この、目の前でわざとらしくお腹をさする黒縁メガネに。
「……蛍。うざい。うるさい。黙って。」
「さっきは本当に痛かったんすよ?!喧嘩なんてやったことない俺が、美琴先輩に全力で蹴られたんすから!」
蛍はそれを根に持ってるらしく、さっきから大袈裟に痛がってるのだ。
この部屋には今俺と蛍しかいない。
というのも理由がある。
「先輩、けっこー派手にやられましたね。頬、青紫になってます。」
「あいつ……橘って何者だっけ。」
「和菓子屋の息子ってなってますけど、多分偽情報っすね。調べておきます。」
───橘行成。
初伊ちゃんと西巴君が部屋から出ていってすぐに、あいつは現れた。
「俺が制裁加えに来るって、めぐいってたでしょ。」
こいつが僕のところに来るまでに、多くの東校生と喧嘩をしてきたのは知っていた。
僕は東麻組の次期組長だし、小さい頃から武道を中心として、組長に必要だと判断されたものは片っ端からこなしてきた。
だから四校総長の中では一番強いだろう。
これはほぼ確信。
疲労の溜まってる橘に負けるはずはないと応戦すれば。
多少の抵抗は出来たものの、あっという間に殴られ蹴られ。
気づいたら意識は飛んでて、そんな俺を蛍が見つけたと言う。