プリキス!!
「さっきさぁ……皆俺の事助けるの面倒がって、見向きもしなかった。けど、あんたが来てくれて若干感動したよ。」
「ふぉこまぁでのふぉとはひてまへむ。(そこまでのことはしてません。)」
「ふっ、何言ってんのか全然分からないし。」
春瀬さんはにかっと笑う。
その笑顔は、花に例えるなら向日葵みたいだ。
「兎に角、どーもね。」
「ふぁい。」
「てか敬語やめて。タメなんでしょ。」
「ふぁい。……あ、うん。」
敬語言いかけたじゃん、とまた春瀬さんは笑った。
「あ、そこの倉庫まで行きたいんだ。中に人いるから、玄関先まで付き合って。」
倉庫……。
普通の人はこんなところに用はないし、もしかしたらこの人、北校連盟の姫かもしれない。
(橘……また関わっちゃったかもです。)
倉庫の前まで来ると、春瀬さんはスライド式のドアを慣れたように足で開けた。
「おーい、誰か来てー!」
春瀬さんは人を呼んで。
ちょっとこれ置いてくるから待ってて、と私に言い残して倉庫の中に入って行った。
春瀬さんと入れ違いになるように、男の人がこっちに来る。
学ランの着こなしが如何にもチャラそうな人だ。
その人は茶髪で、黒縁メガネに……
って……ん?学ラン?
学ランって……東だよね?
ってかこの特徴は……!!
「?!……初伊先輩?!」
「蛍君?!」
そう、東の副総長、蛍君だった。
なんで蛍君がいるの?
そう聞こうとした瞬間、蛍君は私の持っていた缶ジュースを凄い勢いで奪って。
「さようなら!!」
ピシャン、と思いっきりドアを閉めた。
「何だ……?」
よく分からないけど、もう帰っていいらしい。
「本屋さんー♪キミスキが私を待っているー♪」
私は鼻歌混じりで来た道を引き返す。
漫画を買いに行ける事に浮かれて、私はこの時忘れていた。
今日は何の日か。
なんで蛍君がいるのかは、よく考えれば分かったのに。
“四校連盟総会”なんて単語、頭から一切抜けさっていたんだ。