プリキス!!
そう、先程から言っているように、女好きで放っておけば彼女を何十人も作りそうな北原天真に彼女がいないのは、北原が春瀬の綺麗すぎる女装に悪ノリしたからで。
春瀬より可愛い女子が1年間も誰一人現れなかったからな訳で。
その春瀬が、自分より可愛いと認めたと言うことは、その女の子は必然的に北原の彼女になるための第一審査を通過してしまったという事で。
俺からしてみれば、ご愁傷様ですという感じなんだけど、
その女の子にとっては喜ばしい事なのかもしれない。
なんたって北原は、総長・イケメン・日本一の大企業北原財閥の御曹司、と三拍子揃ってる有料物件なんだから。
「え……本当ですか?今から追いかけたら、会えるかな。」
灰音が認めた美少女を見てみたいです、と北原は立ち上がった。
もう何処にでもいいから行ってくれ。
ついでにもう帰ってくるな。
俺だけではなく、他の総長達や吉良先輩も心の中でそう思っただろう。
面倒くさい北原がいなくなるチャンス!と喜んだかもしれない。
「〜〜、春瀬先輩の方が可愛いっす!!」
だから東高の副総長がそう叫んだ事は、あまりにも理解出来ない事だった。
「蛍?……何言ってんの?」
「俺……心は男だからあんたに口説かれても困るよ。てか不愉快かつ気持ち悪い。」
しらーっとした目でこの場にいる全員から見られても、片桐は北原の前に立ちはだかって、そこから動こうとはしなかった。
「春瀬先輩を口説いてる訳じゃないっすから!ただ……客観的に見て、春瀬先輩の方が可愛いから、北原先輩は見に行く必要はないです!」
「いや、俺より可愛いって。」
「あんなの……可愛くなんか……。」
「あんた……本職の俺に口出しするのやめてよ。あの子の顔の比率と俺の顔の比率を比べても、より黄金比に近いのはあの子の方だった。なんたってこの俺がメイクの練習台にしたいと思った程なんだから、可愛いに決まってる。」
黄金比やらなんやら、専門用語の登場と春瀬の迫力に、片桐はたじろいだ。