プリキス!!
「そんな大切な事勝手に決めたら、東麻怒るんじゃない?」
そう聞けば、そうなったら俺が悪いんで怒られます、と片桐は顔を青くして言う。
その反応は、“東麻に怒られる”っていうのがどういう事か分かって覚悟を決めてやってるってことがよく分かるもので。
意外と潔いんだ、なんてちょっと好感触。
「烏丸の安全と、東西の一時休戦か……。こっち側には断る理由はない……よ。」
片桐の交渉には、こちら側には利益しかない。
めぐも俺も、面倒な事はやらずに出来るだけ省エネで過ごしたい派だから、向こうが攻めて来ないならそれが一番いいんだけど。
東のメリットはなんだ?
断る理由がないと言えば、さっきとは打って変わって片桐は喜んだ。
じゃあ、交渉成立っすね!と握手まで求められて。
“東麻組次期組長”にこっぴどく絞られる可能性があるのに、何故こんな西にばかり有利な提案をしてる?
考えても答えは一向に出ず。
超高知能の考える事は本気で分からない、と諦めて、差し出された手を握り返した。
だけどその答えを俺はすぐ知ることになる。
「よかったぁ。うちの総長は“黒爪”、怖いらしくて近づけたくなかったんすよね。」
総長が怖がるザマなんて、下の奴は見たくないっすから。
すっかり安堵の口調でそう繋がる言葉。
片桐のその答えは、俺を固めさせるのには十分だった。
「………片桐、誰が“黒爪”だって?」
「橘先輩が“黒爪”ですよね。先日、美琴先輩が殴られた跡を見て分かりました。」
……“黒爪”が俺だってことは一応隠しているんだけど。