プリキス!!
「片桐、俺は“黒爪”じゃないよ?」
「それ、無駄な悪あがきって言うんすよ?」
否定しても余程自身があるのか、一向に論を覆さない。
そこまでいうんだったら、どうしてそう思ったか教えてと頼むと、快く片桐はうなづいた。
「まず前提として、“黒爪”は義賊です。化物みたいに強い、黒いネイルをした女は決まって弱いものを助けてきた。
例えばカツアゲや一般生徒を狙った暴力とか、そういう事をする輩にきっと、“黒爪”は制裁を加えてるんだと思いました。
ちなみに、いつの間にか噂はひとり歩きして黒爪は幽霊だっていう都市伝説化したみたいですけど。」
……合ってる。
俺が黒爪になったのは、一般生徒にたかるヤンキーを見ていられなかったから。
でも“橘 行成”が制裁をして回ってる、なんてバレたら俺の周りの人に迷惑がかかると思ったから、
俺は爪にマニキュアを塗り、フードを深く被って顔を見られないようにして、“女”のように見せかけてきた。
ちなみにボコった奴らの近しい人に、黒い爪の手とそいつらの悲惨な姿を写した写メを送る事で、「同じ事をしたらこうなるぞ」と牽制してきたんだ。
ただ……
「黒爪が……幽霊だって?」
自分が幽霊にされていた事は初耳。
「黒爪は恋人だったヤンキーに裏切られて殺されたお化けで、黒爪がヤンキーしか狙わないのはヤンキーに報復するためだそうです。」
しかもなんだか本当にありそうな設定までつけられてるから驚きだよね。
「先輩、“黒爪の女は強い”と言われる本当の由縁は何だか知ってますか?」
「さぁ。」
「本人目の前にして説明するのもなんなんですけど、彼女は合気道・柔道・空手道・少林寺拳法……信じられないくらいたくさんの武道を自由自在に操ってるんです。
それは、恐らく“黒爪”は抜け目ない奴で、戦い方を一つに定めない事で黒爪が誰かを特定させないようにしていた。」
その通りすぎてぐうの音も出ないよね。
そして自分のことを分析されると何だか恥ずかしいよね、うん。