プリキス!!
「さて、ここからが謎解きですよ。ちゃんと耳の穴かっぽじって聞いてて下さいね!」
「はいはい。」
テンションだだ下がりの俺とは真逆に、楽しそうに話す片桐。
話せって言ったのは俺だけど、今更ながらやっぱり聞かなきゃ良かったな、と後悔だ。
「先日。美琴先輩のもとに一通のメールが届きました。titleは報復。添付されていた写真には、黒爪の手と東のヤンキーが写ってました。
……うちは先代総長もかなり性格悪かったっすけど、美琴先輩も相当なんで、黒爪に制裁される覚えはありすぎてありすぎて。
事実、東校ヤンキーの7人に1人は黒爪にやられた経験があると。」
俺……思った以上に東校生殺ってたんだね。
「その時やられた東校生は、西校生と“カラスちゃん”を襲ったんだと聞きました。カラスちゃんは言わずもがな、初伊先輩っす。
その時、初めて黒爪はミスをおかした。」
「……話を聞く限り、普通だけど。」
ミスなんかしていないはず。
あの時は、烏丸を襲った事にかなりムカついて……頭に血が上って、少しやりすぎちゃったところはあるけど……。
本人すら分からないミスを、片桐は見つけたと言う。
「その時の東校生には、蹴られた跡はあっても殴られた跡はなかった。殴られた跡は無かったけど……首や頬、更には腹部に至るまで、青黒くなった綺麗な細長い跡があったんです。
その跡は、この間あんたに美琴先輩がやられた時に出来たものと同じだった。
美琴先輩は、強かったでしょう?東麻組の次期跡取りで、武術はなんでもこなせる人だから、強くて当然なんです。だから、あんたは自分が最も得意とする術を使うしかなかった。そうしないと、勝てなかった。
同じように、初伊先輩が襲われたと聞き、余裕が無かったあんたは無意識に一番得意な手刀を使ったんです。
人間、焦ると本性が出ると言うでしょう。」
黒爪はあんたっすよ、と。
持論の全てを言い尽くした片桐は満足そうだ。
確かに俺は故郷──香港で習った手刀を得意とし、事実、本職の接近戦ではそれを使っている。
余裕がなくなると、それが自然と出てしまっていたらしい。
そんな数少ない証拠で黒爪の正体を見破った片桐の頭脳は……やっぱり、国をあげて守ろうとするだけあるよね。