プリキス!!
そう言って笑いかければ、
「うん……ありがとう。」
東麻君は、優しく笑い返してくれた。
にこっと、花が綻ぶような笑顔だ。
……。
「と、東麻君?」
ここまでは感動的な話として纏められそうだけれども、
異常事態が発生した。
頭の中にもし小さな小人が住んでいるとするならばきっと、“エマージェンシー!”と叫んでる。
というのも、ぽすりと東麻君は私の肩に顔を乗せたのだ。
どうしていいのか分からないのも困るんだけれど、
息遣いが、耳元で聞こえるのも困る。
それはもう距離が……近いよ!
「と、東麻君。お兄ちゃんのベッド使っていいから、具合悪いんだからそこで休んでて?」
かなり挙動不審になったかもしれないけれど、取り敢えず東麻君を引っ剥がそう。
そう思っての提案だったが、東麻君はうーんと唸って。
「流石に吉良君の所で寝るのはちょっと……。」
そんな気まずい事できないよと苦笑してる。
思い出して欲しい。
今東麻君は私の肩に顔を載せていて、息遣いが聞こえるほどの近さだ。
そんな近さで、声を出されるとなんだか首の辺りが凄くくすぐったくて。
「どうしたの?」
「く、すぐったい……!」
体を強ばらせたのが分かったのか、怪訝そうな声で聞く東麻君にありのままの感想を言えば。
「あいうえおかきくけこさしすせそー。」
「きゃあーー!」
奴はやはりただのエンジェルじゃないらしい。
黒い笑顔が見え隠れする、ドSだ。