プリキス!!




『はい?もしもし。』


「袴田君?こんにちは。」




その人は、袴田君と言う。

南高のヤンキーで一年生。

彼は私の声を聞くと、『え"?!』と酷く驚いた。

そんな彼に取り敢えず言いたい事は、電話に出るときはディスプレイをみようか、という事だ。






私が袴田君を選んだ理由。

それは……



“袴田ぁ!メモしておけ!”




袴田君は、よく先輩ヤンキーからそう命令されている。

それ故に袴田メモにはたくさんの情報が書かれていて。




南に放課後行くようになって、そこそこ仲良くなった袴田君に前それを見せてもらった。


そこにはくだらない事もたくさん書かれていたけれど、

“東校総長の弱点”だとか、“西校総長の電話番号”だとか、なかなかトップシークレットな事も書かれていた。






「袴田君!袴田メモによると、東麻君の家は何処ですか?!」



だから、もしかしたら知ってるんじゃないかと思ったんだ。





電話の向こうでは、えーっと……とパラパラと紙をめくる音がして。


「東麻の家なら、東区の2番通りの“ソル”ってマンションっすね。部屋番号は分からないですけど……。」

「ありがとう!さすが袴田メモ!」

「別にこれくらい朝飯前ですけど……何に使うんですか?」




ギクリとした。

袴田君の言うことは分かる。

だって一女生徒が東校総長の家なんて知っても意味ないから。



「袴田君……。」

「はい?」

「お兄ちゃんには私が東麻君の住所聞いた事、秘密にしてね!」



そのままブチっと電話を切った。

なんか下手な事言ったら、怪しまれてそのままお兄ちゃんに話が行ってしまうと思ったから。


ごめんね、袴田君!


< 259 / 422 >

この作品をシェア

pagetop