プリキス!!
『はい?もしもし。』
「袴田君?こんにちは。」
その人は、袴田君と言う。
南高のヤンキーで一年生。
彼は私の声を聞くと、『え"?!』と酷く驚いた。
そんな彼に取り敢えず言いたい事は、電話に出るときはディスプレイをみようか、という事だ。
私が袴田君を選んだ理由。
それは……
“袴田ぁ!メモしておけ!”
袴田君は、よく先輩ヤンキーからそう命令されている。
それ故に袴田メモにはたくさんの情報が書かれていて。
南に放課後行くようになって、そこそこ仲良くなった袴田君に前それを見せてもらった。
そこにはくだらない事もたくさん書かれていたけれど、
“東校総長の弱点”だとか、“西校総長の電話番号”だとか、なかなかトップシークレットな事も書かれていた。
「袴田君!袴田メモによると、東麻君の家は何処ですか?!」
だから、もしかしたら知ってるんじゃないかと思ったんだ。
電話の向こうでは、えーっと……とパラパラと紙をめくる音がして。
「東麻の家なら、東区の2番通りの“ソル”ってマンションっすね。部屋番号は分からないですけど……。」
「ありがとう!さすが袴田メモ!」
「別にこれくらい朝飯前ですけど……何に使うんですか?」
ギクリとした。
袴田君の言うことは分かる。
だって一女生徒が東校総長の家なんて知っても意味ないから。
「袴田君……。」
「はい?」
「お兄ちゃんには私が東麻君の住所聞いた事、秘密にしてね!」
そのままブチっと電話を切った。
なんか下手な事言ったら、怪しまれてそのままお兄ちゃんに話が行ってしまうと思ったから。
ごめんね、袴田君!