プリキス!!
眉間に皺を寄せて不機嫌を露にする遊佐さんは、私のワンピースの襟元を掴んで持ち上げる。
首が、苦しい。
「お……ぼう……さいてい……」
“女の子に暴力とか最低”
その言葉は、首元を締め付けられている事によって上手く伝える事が出来なくて。
ただ……
「最低だぁ?うっせーぞ、暴力女!」
相手を怒らせる言葉だけは、運悪く伝わってしまったみたいだ。
カンカンに怒ったらしく、遊佐さんの顔は大きく歪む。
私の襟元を掴んでない方の手を強く握り、彼はそれを手前に引いた。
ああ……殴られる……!
スローモーションで、彼の拳が近づいてくるのを見た。
人間の危険に対する反射の作用。
ギュッと目を瞑って、きたる痛みに耐えようとした。
しかし、5秒たっても10秒たっても、その痛みは襲ってこない。
恐る恐る目を開ければ、
そこには遊佐さんの手を笑顔で思いっきりひねる黒髪ロングヘアの美少女がいて。
「誰だ?!」
「はっ……笑わせるよねっ。女の子にまで手ぇあげようとするとか。」
怒る遊佐さんを挑発するのは、少年の歌うように綺麗なアルトな声。
「北原君に女の子の口説き方、教えてもらったら少しはマシになるんじゃないっ?───ああ、ごめん。顔の造りが恵まれてないあんたには、到底出来ない芸当だったねぇ。」
「お前、まさか……?!」
彼は、声でその少女の正体に気がついたらしい。
目を見開く遊佐さんが少女に何かをする前に、先手必勝とばかりに少女は思いっきり遊佐さんの顔を殴る。
「ええええ?!遊佐さぁん?!」
「大丈夫っすか?!」
少女に殴られて大分遠くに吹っ飛んでいった遊佐さんを心配し、カラフルさん達が彼に駆けつける。
「行くよ!」
カラフルさん達の意識が完全に遊佐さんに向かったのをみて、少女は私の手を掴んで、マンションの中へと走り込んだ。