プリキス!!
千鳥さんは、ヤクザの組長さんだ。
だから人は千鳥さんの事を怖いと言うかもしれない。
……てゆーか、私は千鳥さんの事を怖がってるし。
でも千鳥さんは、自分の奥さんを殺すような人じゃなくて。
私の知る限り千鳥さんは、誠実で、不器用で、優しい人だ。
だから東麻君のその告白には、息を呑むほど驚いた。
東麻君は話を続ける。
東麻君は鈴子さんと知らない男の間に出来たいわゆる“連れ子”だったらしい。
鈴子さんと千鳥さんが結婚したのは、東麻君が生まれてからだそうだ。
「僕は仮染めの跡取りなの。沙織さんとの間に子供が出来たらその時は、東麻組はその子のものになるはず。千鳥さんは、僕の事が嫌いだからね。」
「どうして……?」
どうして、父親に嫌われてるなんて事を言いきれるの?と聞いたつもりだったんだけど、
東麻君はどうして嫌いなの?に捉えたらしい。
「僕の顔がね、鈴子にそっくりなんだ。
自分の血を分けた子どもならまだしも、他人の子供で……裏切り者の子供なんて、可愛い訳が無い。
あのね、東麻組は今は関東最大だけど、昔一度清美組という組にその座を奪われた事があって……その時に鈴子は、東麻組の組長の妻にも関わらず清美についたんだ。
清美側について、東麻組の情報を流して、東麻が使えないと分かったら清美と寝て、千鳥さんを捨てた女。」
それが鈴子だ、と吐き捨てるようにそう言う。
「だから僕は、そんな鈴子と似てる顔が嫌いだ。出来ることなら千鳥さんに、どんな方法でもいいから消して貰いたいよ。それに……媚びる奴も、すぐ裏切るやつも、この世から消えてなくなればいいと思う。」
『あの人、可愛いって言われるのが一番嫌いなんです。』
いつの日か、蛍君が教えてくれた。
東麻君が可愛いって言われるのが─容姿をとやかくいわれるのが─嫌いなのは、きっと鈴子さんに似ているから。