プリキス!!
一列のソファーに夜白とお兄ちゃん、そして私が座り、ガラスのテーブルを挟んで向かいのソファーに美琴と蛍君が座る。
「で、敵陣に東の総長様がわざわざ何しに来たぁ?」
夜白の挑発するようなその言い方に、美琴は悪魔の方の笑顔を貼り付け、蛍君はそんな総長同士の静かなる争いにただただ涙目だった。
だーかーらぁ、と間延びした、少し苛立ちを含めた声で美琴は夜白へ返事をする。
「さっきも言ったじゃん。南城君には用はないって。僕は“敵陣”に来たんじゃなくて、“初伊ちゃんのいる場所”に来ただけなんだよね。」
「………………私?!」
予想外だった。
予想外過ぎたよね。
総長同士の争いが始まっちゃうのかとヒヤヒヤしていたのに、まさかの発言だ。
私のせいで南に結構な騒動を招いてしまった事に、今更感があるけど心の中では土下座している。
「お前が……初伊に会いに来る為に“こんな所”まで来たって?……ありえねぇ。」
「僕からしてみれば、南城君の新彼女情報を聞かないのがありえない。……あ、彼女じゃなくてセフレか。」
「おい……とっとと本題話して帰れ、美琴チャン。」
「南城君死ぬ程ウザイ。」
ああ、なんだか本当にブリザード。
夜白と美琴の一触即発感は、陰飛羽を凍らせちゃうんじゃないかって位の冷気を発してる気がする。
体感温度、-30℃。
「怖い寒い……!」と蛍君が震え上がってるから、このブリザードは私の妄想ではなく、きっとこの場にいる人はみんな感じるものだろう。
やっぱり総長同士って、仲が悪いものなのかな。