プリキス!!
ふと、黒ーいオーラを感じて横を見れば、恐ろしい顔をしたお兄ちゃんが目に入った。
「……遊佐やら東の問題やら……初伊……また何かに首つっこんだな……?」
私、完全に“秘密”にしていた事を忘れてたんだ。
遊佐さんとのいざこざ……そもそも美琴とこの間会った事自体を隠していた。
なのに、思いっきりお兄ちゃんの前で話しちゃった!
絶対怒られる……!
どういうことだ?と笑顔で凄むお兄ちゃん。
言い訳を頭の中で探すけれど、考えても考えてもそれは見つからず。
いっそ正直に話して怒られちゃった方が楽かな、と困り果てているところに、「吉良くん」と救いの手が差し伸べられた。
「今は過ぎたことを気にしてる場合じゃないと思うよ。遊佐のことは置いておいて、こっちが本題。」
そう言うと美琴はスマホを取り出した。
幾つか画面を操作して、それを私に手渡す。
受け取ったスマホの画面には、“陰飛羽生の掲示板”と書かれていて。
その中で一際目立つ赤い字で書かれたその文字を見て、私の思考は停止した。
《水南のアオについて知ってる奴は書いていけ》
“知ってる!”
“アオ?誰だよ”
“東西南北の総長の姫でしょ。”
“kwsk”
“美人なの?”
“アオって何?本名?誰か画像ないの?”
「水南の、アオって……」
私の偽名だ。
公共の電波で“アオ”が話題になってる?!
「まぁ……噂にならねえ方がおかしいか。」
「良くも悪くも目立つからねぇ、僕ら。」
呆然としている私からスマホを奪い取るお兄ちゃん。
更にそれはお兄ちゃんから夜白へと手渡された。
「初伊ちゃん、一つ聞いていい?」
「………あ、ごめん。何?」
「そこにアオは“東西南北の総長の姫”って書いてるんだけど、北原君に会ったりしてないよね?」
未だに思考をトリップしている私に美琴はそう聞いた。
北原君?
誰だろう。
北原と聞いて思いつくのは天音先輩しかいなくて、その旨を告げると、良かったぁと漏れた安堵の声。