プリキス!!
「初伊ちゃんのことだから、北原君と知り合いになっちゃってるんじゃないかって思ったあ。」
うっかりさんだからね、と美琴はクスクス笑う。
いや、自分では割としっかりしてると思うんだけど。
しっかり者のお姉ちゃんを見て育ち、天然のお兄ちゃんを相手に生きてきたんだもん。
そんな事は置いといて。
「北原君って人が、……北の総長さん。」
話の流れ的には、その“天音先輩じゃない”北原さん=北の総長様が成り立ってる。
初めて聞いた北の総長さんの名前。
“四校連盟一番の下種”なんて橘に言わせてたけど、名前が北原なだけで、ちょっと親近感が湧いた。
そんな油断した気持ちが美琴にも伝わったのか、彼はダメダメ!と言う。
「最低最悪のクズ男だから会わないように気をつけてね!絶対だよ!」
その顔は真剣そのものだ。
天使悪魔さんといい橘といい、そこまで否定しちゃう?って位北原さんを否定してる。
まだ顔も知らない……っていうか、多分一生会わないであろう北原さんが何だか不憫に思えてきたよ。
「俺にはお前も違う意味で北原並のクズ男に見えるけどな。」
「同感だねぇ。僕も南城君をクズ男だと思ってるよ。」
「……どっちもどっちだろ。」
「……っすね。」
その後も、一触即発感は拭えなかった。
「用事は済んだな」と夜白が半ば強引に美琴と蛍君を南から追い出して。
帰り際に蛍君が「写真流出しちゃっても俺が消すんで安心して下さい」と言ってくれた。
写真……流出か。
もし流出したら、私のカナ女人生が終わるだろう。
蛍君は安心してくれって言うけど、そういうのって一度世間に出たら完全には消えないはず。
恵に橘。
夜白。
美琴に蛍君……。
もう、関わらないなんて出来ないよ。
だって……仲良くなっちゃったんだもん。
美琴の教えてくれた掲示板の存在は、なんとなく心にモヤをかけた。
私は、どうすればいいんだろう。
“お嬢様の烏丸初伊”を取るか、“本当の烏丸初伊”を取るか、決めなきゃいけないって事?
今すぐじゃないにしても、いずれは───答えを出さなきゃいけないの?
お嬢様の烏丸初伊でいたい。みんなに認められたい。でも、“皆”とは離れたくない。仲良くしたい。
心のジレンマ。
無性に、胸が苦しくなった。