プリキス!!
「これを見て下さいよ。」
ノートパソコンを差し出せば、灰音はそれを受け取り。
「…ふっ…………っ、あっはっはっ!!あーっはっはっは!」
暫く画面を見つめたかと思えば、大爆笑を始めた。
豪快に手を叩いて、涙を流しながら笑っている。
「ありえない!誰だよ、この水南のアオって奴!東西南北の総長をオトした?なぁ、天、オトされたの?」
「みたいですねえ。」
灰音がありえないというのと同様に、私も有り得ないと思った。
だって“オトされた面子”が、ねぇ。
何ににも興味を持たない冷めすぎている西巴君に、
モテるけど誰にも本気にならない南城君に、
腹の中では何を考えてるか分からない東麻君?
太陽が西から出て東から沈むって位に有り得ないですよね。
興味を持ったのか灰音は真剣にパソコンを見つめ始めた。
「水南の生徒で黒髪ブルーアイ……。」
「黒髪青眼って、珍しいですよねぇ。」
「あの子もそうだったなぁ……。」
しみじみとした口調。
灰音と言うあの子とは、灰音の“シエルのミューズ”だ。
いつの日か、灰音が言っていた“俺より美少女”なその子。
是非とも名前を聞いて会いに行きたいと思うんだけれども、灰音に彼女の事を聞く度に、
「駄目。俺はあの子を天には売らねぇ。会いたいなら自力で探しな。」
なんて言われるから未だに会えてない。
探せば会えるかもしれないけれど、一人の女の子にそこまでして会う興味はないから探していない。
灰音のデザインしているブランド、“シエル”。
灰音は何だか最近その子をモチーフに新作を考えてるらしいから、私は勝手にその子を“シエルのミューズ”と呼んでいた。