プリキス!!
「あー!会いたい、会いたい、何枚もシフォン重ねた雨色のドレスとか着せたい!」
どうやら灰音は本当に彼女の容姿が好きらしい。
今だって、黒髪青眼なんて特徴を聞くだけで、デザイン願望が溢れ出てきてる。
「そんなに会いたいんだったら会いにいけばいいでしょう。」
「天の馬鹿じゃないんだから、カナンに北校生が行ける訳ないでしょ。」
「行動力がないと、何にも手に入りませんよ?」
「それとこれとは別!ルールは守るためにあるんだから、東西南北はカナ女生に関わっちゃだめなの!」
灰音は頬を膨らませて言った。
私は……そういうところはあまり理解出来ない。
天下の北原財閥の次男なんていう、抜群に恵まれた環境に生まれ、
途中兄が姉に変わってしまうなんていうハプニングがあったものの、気持ちのままに、自由気ままに生きてきた。
欲しいのなら、奪えばいい。
血まみれになって、命が果てるその瞬間まで、奪えばいいのに……。
灰音はそれを望まない。
「で、探して欲しい人って、この流れだとこの“アオ”って女?」
大分逸れた話は元に戻る。
「はい」と答えれば、灰音は深くため息をついた。
「無理。俺は空想上の人間を連れて来れない。」
パタン、と灰音はパソコンを閉じた。
この話はこれで終わりだと言うように。