プリキス!!
でもね、ここで終わらせるわけにはいかないんです。
だって────こんな面白いネタ、使わずにいられるわけがないでしょう?
これだけ目撃情報があるなら、寵姫かどうかはさておき、話のモデルは実在するはず。
万が一その寵姫が存在したならば、三校の総長達を引っ掻き回して遊べるし、
こんな馬鹿げた噂に出来る程の美人。
一度会ってみたい。
「空想、と決め付けるのはまだ早いんじゃないですか?」
私は灰音に向かって挑発的に笑った。
目的は灰音を苛立たせる事。
何かしらの感情を植え付けさせて、薄れた興味を復活させて、この話自体を終わらせる事を回避するために。
「例えばこう考えませんか。貴方の探している女の子と、アオは同一人物。水南生なんだけど憧れ故にカナ女と名乗った……とか。」
「何?今度はあの子を嘘つき呼ばわり?あの子は心優しいんだから、“東西南北総長を落とす”ようなビッチじゃねえよ。」
普段女性にしか見えない灰音の顔が、完全に男のヤンキーの顔になった。
その目は鋭く、冷たい刃のよう。
……長年の付き合いの私から、一度しか会ったことのない彼女を守るのかと一瞬落胆したが。
まぁ、仕方ないかもしれない。
灰音のミューズ。
彼の全てはシエルで出来ていると言っても過言ではないくらいに、灰音はシエルのデザインを生きがいにして生きてきた。
そんなに大切なシエルのドレスデザインを、その子のために作りたいと、そんな風に言えてしまうんだ。
今灰音の中では彼女の存在が頭の大部分を占めているんだろう。
そんな彼女を私は馬鹿にしたんだ。
ほら、もっと怒って下さい。
そうしたら単純な灰音の事です。
感情のままに、きっと思わず“Yes”と答えてしまいますから。