プリキス!!
私が褒めると、灰音は何だか不思議な顔をした。
鳩が豆鉄砲くらったようなそんな顔。
それがさぁ、と彼が話す事には。
「……水南に行って、アオ連れてきてって言ったら……向こうから来てくれたっていうか……。」
しどろもどろにそう話すので、今度は私が鳩豆。
まさか……向こうから来てくれたとは。
未だに眠り続ける少女を見る。
黒髪の彼女。
開けたらその瞳はきっと青いんだろう。
眺めてみた印象は、容姿で東西南北総長をオトせる程美人……って訳ではなさそうで。
性格に、彼等は惹かれたんでしょうか。
それとも、その噂自体ガセだったのか。
そんな事を考えていると、灰音は部屋から出ていこうとしていた。
「もう少しで起きると思うから、お茶用意してくる。間違っても変な事はするなよ!」
そう念を押して、彼は部屋から出ていく。
ドアがパタンと閉まるのを私は見送った。
何も知らず眠り続けるアオ。
この後、利用される為に連れてこられたなんて知らないで、幸せそうに眠っている。
ごめんなさいね、アオ。
女の子を利用するなんて事、本当はしたくはないんですけど、
東西南の総長達を引っ掻き回せるかもしれないなんて、面白い事、私は手を出さずにはいられないみたいです。
自分の性格ながら、嫌気が差しますよ。
愉しいものを、追い求めてしまう……。
「ん……」と、声が漏れた。
寝返りを打った彼女。
どうやら本当に目覚めが近いらしく、眠りも浅そうだ。
「アオ、起きてください。」
私は彼女の髪を撫でながら呼び起こす。
そうすれば、その瞳は少しずつ開いて。
早く起こそう。
そうしたら―――――
「おはようございます。」
「…………え?」
――――――愉しいカーニバルの、始まりだ。