プリキス!!
「っ……。」
彼女は答えなかった。
正確には、答えられなかった。
何故なら私が、彼女にキスしようと近づいていったから。
――――悪いのは、簡単に“アオ”だと名乗って連れてこられた美蒼ですよ。
先程述べたように私は女癖が悪い。
そして、遊べると分かれば何でもすぐに玩具にしてしまう。
別に気持ちがなくても、快楽を得ることは可能でしょう?
つまらない人生の、暇で暇で仕方がないこの時間を、誰とどうしようと私の勝手でしょう?
幸い私は顔は良い。
だから求めれば、女の子達は皆答えてくれた。
今だって、ほら。
美蒼は目を閉じて来たる時を待っている。
愉しい時間の始まりだと、頭の中ではそう考える。
けれども本心では、少しがっかりしていた。
この子も他と同じかと。
私の心を満たすものに、またもや出会えなかった、と。
あと1センチも顔と顔の距離がないという所で、
カチャリとドアが開いた音がした。
チッと大きな舌打ちに、美蒼も私も部屋の入口を見れば。
「天……こんの、馬鹿!!年中発情期!」
ティーセットを抱えた灰音が、怖い顔で睨んでいた。