プリキス!!
突き当たりの部屋に、総長がいるのはセオリーだ。
だって攻められた時、総長は最後の砦となるのだから、その部屋は奥にあるべき。
めぐはすごい速さで走っていっちゃったから、何処にいるか分からないものの、
きっと北原は突き当たりの部屋にいると目星をつけて向かったはず。
俺も後を追うことにしたのだけど。
突き当たりの部屋まで一直線……なんだけど、視線の先、目的地の閉じた扉の前あたりで部屋には入らず、うろうろしている怪しい人物を発見した。
ワックスでされていると見られる茶髪で、それが誰なのかを何となく察して、声を掛ける。
「片桐。」
「……橘先輩!」
名前を呼べば勢いよく振り向いた彼は、俺が近づくと満面の笑みを浮かべ
「総長達を止められる人が来た!」と安心したように言った。
その姿はさながら飼い主を見つけた子犬のようだった。
「片桐は、何でここに?」
「電話が来たからですよ。あれ聞いて美琴先輩もう激怒。」
片桐の話を聞くと、俺と片桐は同じ内容の電話を春瀬に掛けられたらしい。
恐る恐るそれを東麻に伝えれば、東麻はブチギレたそうで、
バイクを飛ばして北に向かう東麻の後を、半ば死にかけそうになって追いかけた……という事だ。
俺は、ますます訳が分からなくなった。
そいつは東と西の知り合いで?
北に攫われた位でわざわざ総長を召喚できる人?
烏丸が一瞬頭をよぎったけれど。
烏丸はめぐを召喚出来ても、東麻は出来ない。
だから烏丸な訳がない。
「ねぇアオって」
誰?と続くはずの言葉は、大きな破壊音に打ち消された。
ガッシャーン、とガラス製の何かが割れたような不吉な音。
俺と片桐は顔を見合わせ、頷いて、扉を少し開けた。
こっそりと中を覗くと、
そこにはめぐと、恐らく東麻だろう人物の後ろ姿と、
本日も胡散臭い笑顔を貼り付ける、北原の姿があった。