プリキス!!
目を見開き、「あーー!!」と何かに気がついたように春瀬は叫ぶ。
「烏丸初伊って、あの初伊だ?!缶ジュースのあの子だよね?!」
缶ジュースの事情を知っている俺は、“何を今更……”と感じた。
今までだって、散々烏丸の顔を見てきたんだろう?
なのに、それが“初伊”だと気が付かなかったとでも?
俺は、“春瀬は烏丸を忘れていた”のだと嘘をついたのだと思った。
例えば、北原が総長達にボコボコにされてしまった際には、“知らなかったんだ!”と釈明するために。
でも、片桐は“初伊先輩がアオだと知らなかった”ように見えると言う。
じゃあ、アオがいるっていうのはハッタリだった訳?
何故だか分からないが、必死の形相の春瀬。
いつもは“聖カナンにいてもおかしくない”と思えるくらいの品格と余裕を兼ね揃えている春瀬だが、
今に限ってはただの“女装した男”にしか見えない。
ようするにオカマにしか見えない。
それ程までに必死な顔で、春瀬は聞いた。
「あんた達、あの子が此処にいると思ってきたの?あの子がアオなの?」
片桐と俺は頷く。
そうするとガックリと春瀬は項垂れた。
長い髪がはらりと、彼の顔を隠す。
ふふふふ、と突然笑い始めた春瀬は、何処かネジが外れたらしい。
「なるほど。なるほどねぇ。そっちは間違えだったのか。………じゃあ、本当に……天の言う通りだった訳か。
清楚系だと信じてたのに……。ああーーーー……こんな事実、知りたくなかったーーー!」
「初伊先輩は、紛れもなく清楚系っすよ?」
「紛れもなく肉食系だろ!」
確かに、状況だけ聞けばかなりの肉食系。
有り得ない位美形ぞろいの今代総長達を手の上で転がしてるなんて、凄い悪女みたいだけど。
「烏丸は、総長達の誰とも付き合ってないよ。というか全面的な被害者だよ。」
「ああ、それは本当にそうっすよね。初伊先輩って、死ぬほど運が悪いと思うんです、俺。」
事実としては、ただ悪運が強い、変わった女の子なんだ。