プリキス!!



お兄ちゃんはディスプレイを見て、何かを不思議がるような顔をしていた。

きょとん、と言うのが相応しいだろうか。


ちなみにこれがお姉ちゃんやめぐからだと、眉を顰めるから嫌がってるのがよく分かる。

でも、何とも言えない表情で。



「春瀬か?」とお兄ちゃんは電話に出た。



「珍しいな。………………は?アオ?アオって……アオか?……北に、いるって?……分かった、今行く。」





お兄ちゃんの電話相手の春瀬さんに聞き覚えはなかったけれど、“アオ”という人ごとじゃないワードに体は自然と強ばって。


そうしたら、今まで三つ編みを一生懸命作りこんでいた夜白が、急にそれまでの努力を手放した。


心配してくれたのか、後ろからぎゅっと優しく抱きしめて、“お前は大丈夫だから”と囁かれて。



たまに起きる夜白のスキンシップ。

いつもは押し返したりするけれど、今日は何だか夜白の優しさに甘えたくなって、

黙って抱きしめられてみた。




甘い、マスクの香りがした。





「アオが、北に捕らえられたと。」



電話を終えたお兄ちゃんが言った言葉に、私は固まる。

きっと五秒くらい、置物になっていたに違いない。




「アオって…………あれ?私の事……だよね?」

「ああ、初伊だ。」



お兄ちゃんに肯定されるまで、“アオ”が私だって自信を持って頷けずにいた。

だって、私は今南にいる。

なのにお兄ちゃんは、アオは北にいるって言う。



何が起きてるの?



< 333 / 422 >

この作品をシェア

pagetop