プリキス!!
お兄ちゃんはディスプレイを見て、何かを不思議がるような顔をしていた。
きょとん、と言うのが相応しいだろうか。
ちなみにこれがお姉ちゃんやめぐからだと、眉を顰めるから嫌がってるのがよく分かる。
でも、何とも言えない表情で。
「春瀬か?」とお兄ちゃんは電話に出た。
「珍しいな。………………は?アオ?アオって……アオか?……北に、いるって?……分かった、今行く。」
お兄ちゃんの電話相手の春瀬さんに聞き覚えはなかったけれど、“アオ”という人ごとじゃないワードに体は自然と強ばって。
そうしたら、今まで三つ編みを一生懸命作りこんでいた夜白が、急にそれまでの努力を手放した。
心配してくれたのか、後ろからぎゅっと優しく抱きしめて、“お前は大丈夫だから”と囁かれて。
たまに起きる夜白のスキンシップ。
いつもは押し返したりするけれど、今日は何だか夜白の優しさに甘えたくなって、
黙って抱きしめられてみた。
甘い、マスクの香りがした。
「アオが、北に捕らえられたと。」
電話を終えたお兄ちゃんが言った言葉に、私は固まる。
きっと五秒くらい、置物になっていたに違いない。
「アオって…………あれ?私の事……だよね?」
「ああ、初伊だ。」
お兄ちゃんに肯定されるまで、“アオ”が私だって自信を持って頷けずにいた。
だって、私は今南にいる。
なのにお兄ちゃんは、アオは北にいるって言う。
何が起きてるの?