プリキス!!
「あの!天真先輩!」
背筋を伸ばしてしゃんとする。
そうして呼吸を整えれば、どんな敵も小さく見えるのよ?
そうお姉ちゃんに教わった。
天真先輩が小さく見えるかは置いておいて、気がすっと晴れたのは確かだ。
「兎に角、ですね。私は“姫”には興味はありますが、それはなりたいとかそういう事じゃないんです。」
漫画がどうとかそういう事を言ったら、また愉快だと標的にされてしまうと思って自重。
「第一、誰かと付き合うなら……一番に見るべきは顔ではないでしょう?」
これは本心だ。
誰かと恋愛するのなら、決め手は顔じゃないと思ってる。
というか、うん。
今まで見てきて、お兄ちゃんの美しさに勝った人は居ないのよ。
こんな近くに、とんでもない美形がいたんだ。
多分どんなイケメンでも、顔で勝負すればお兄ちゃんに負けちゃうから、顔で選びはしない。
「……いえ。顔は大事ですよ?」
きょとんとした顔で、天真先輩は首を傾げる。
だって───と言葉が続くけれど、私はその言葉を聞くことはなかった。
音声は聞こえず。
満面の笑みで何かを言ってるらしい天真先輩の、口の動きだけが見えたんだ。
もっとも、読唇術なんて出来ない私には何を言ってるかは分からなかったけれど。