プリキス!!
母は、兄貴以外の子供への執着……つまるところ、俺と姉貴への執着はないに等しく、
俺と姉貴はいつもほったらかしだった。
母の代わりに、家で働く従業員達が俺達を育ててくれたと言っても過言ではない。
皆、優しく、時には厳しく育ててくれて。
けれどもやはり、我が子を可愛がるような父親と母親の存在が、羨ましくもあった。
そんな日常を繰り返していくうちに、姉貴はだんだん部屋に閉じこもりがちになった。
だから俺は1人森で、ただ1日が終わることだけを祈って、待っていたんだ。
「お帰り、吉良。」
ある日、いつも通り夕方に家に帰ると、本当に丁度今帰ってきたらしい父親が玄関先に立っていた。
およそ半年ぶりに見る父親は、何だか凄く優しそうで。
思わず抱きついて、大泣きしてしまった事を覚えている。
「寂しかった?」
貴方はなんて馬鹿な事を聞く。
寂しかったに決まっているのに。
夕食の時間になった。
珍しく父さんが帰ってきているので、姉貴は部屋から出てきた。
俺と、姉貴と、父さんと。
本当に久しぶりに家族らしい食事をしたんだ。
「志乃は今、好きな事はあるの?」
「志乃は……本を読むのが……好き。」
「それはいいね。丁度お土産に、いくつか面白そうな本を買ってきたから、後で選びなさい。」
「……っ、うん!」
姉貴は顔を綻ばせて、喜んでいた。
「吉良は?」
「え、」
唐突に、話題が俺に移る。
「吉良は何が好きなの?」
「僕は………………」